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Bright Lights
みんながやんないならア・タ・シがヤル!!

星のいない週末

 雨に閉ざされた休日。空を見上げても、全てを洗い流すような土砂降りの雨が覆い尽くし、星も見えません。空っぽの部屋の中で、聖子さんが星の図鑑を開くと、そこには小さな青い星がぽつんとひとつ光っていました。

 やや歌詞が象徴的ですが、描写はきちんとなされており、鮮明な情景が浮かび上がります。さびのところで張り上げる聖子さんの歌声が、とても初々しくて、若さが感じられます。

 ファーストアルバムの先頭を飾るこの曲は、なにか素晴らしいことが起こる予感に満ち溢れており、これから繰り広げられてゆく佐藤聖子の世界の始まりを告げるのにふさわしいのではないかと思います。

 私も、この歌にあこがれて、本屋まで星の図鑑を探しに行きましたが、あまりにも乙女チックで恥ずかしく、買うのをやめました。

 

ハミングロード

 春の足音が聞こてくるころ、聖子さんは素敵なボーイフレンドとめぐり合いました。最初は、照れくさくて、秘密にしていたけれど、やがて、堂々と彼と腕をくんで、一緒にハミングしながら、幸せいっぱいに、学校から街に向かって、歩き出します。

 この歌を聴くと、生まれて初めて恋人ができたときのうれしさ、それをみんなに打ち明けたときの開放感、爽快感を思い出しませんか。一緒に歩いて行く二人の幸せな一杯な姿は、まぶしすぎる青春の輝きそのものです。聖子さんの初々しい歌声がこの曲にぴったり。後半部分を聞いていると、それだけでウキウキしてしまって、いつも、このまま曲が終わるな終わるなと思ってしまいます。

 一度聴くと忘れられないcatchyなこの曲が、なぜシングルカットされなかったのでしょうか。いろいろとプロの判断があったのだとは思いますが残念です。

 ライブでは、私は、いつも、最後の「大好き、大好き、ううううー」のコーラスをしつこく大声で歌っていました。

 

Moonlight Wolf

 だれもがせわしそうに歩いて行く大都会の街角。空の向こうに美しく輝く月が浮かんでいるのに気づきません。聖子さんは、その月に向かって、愛しい人をことを思いながら、泣き叫びます。その姿はまるで狼男のようです。

 記念すべき聖子さんのデビュー曲。とにかく元気な歌声が魅力です。失恋してメソメソと泣くのではなく、満月めがけてうおーうおーと叫ぶのが豪快で実にいいです。聖子さんの元気さと、恋に対する一途な心がよく表現されていると思います。

 当時、聖子さんのライブによく来ていた仲間から、この曲は実は聖子さんが半分くらい作曲していると聞いたことがあります。本当なのでしょうか。そう言われてみれば、確かにそんな雰囲気も漂っています。

 初期のころ、この歌をライブの時に歌うのは苦しそうでした。中野サンプラザでコンサートをやったときに、私は開場までの間、辺りをうろうろしていました。すると、中からこの曲を苦しそうにリハーサルする歌声が聞こえていました。今日は一世一代の晴れ舞台だから、聖子さんがんばってくださいと、会場の外から祈っていました。

 

愛は 愛は 愛は

 聖子さんが会った彼氏の友達の女性は、実は、彼の次の恋人でした。聖子さんは、最初は強く、涙を流さずにいましたが、やがて、彼を目の前にして涙があふれてきます。

 この曲の聖子さんの歌声は、とても切れ味があります。乾いた透明感というか、真っ暗な暗闇の中に聖子さんの歌声の一筋の光のように乾いて響いている感じです。ウェットな曲が多い聖子さんの中では異色の曲ですが、乾燥感が聖子さんの普段と違う一面を引き出していています。歌詞も、涙もでない、乾いた心を表現していて、曲の雰囲気とよく合っています。最後には泣いてしまいますけれども。

 そういえば、むかし、「Girl Pop」誌に、「アイワは、なぜ佐藤聖子ちゃんの『愛は愛は愛は』をCMソングに使わないのだろう」というジョークが載っていたことを思い出しました。

 

恋人になろうよ

 聖子さんには、親しい男性の友人がいましたが、まだ友人のまま。聖子さんも彼も互いに引かれあっているのですが、まだどちらからもきちんと告白しているわけではありません。そこで聖子さんは、思い切って告白します。恋人同士になれば、いろいろ楽しい日々が待ち受けています。聖子さんの心は、うれしい期待で一杯です。

 こういう告白の仕方って理想ですね。どちらからともなく互いに引かれあって、自然に恋人になっていく。私も一度こういう恋愛がしたかったです。私の場合は、片思いからいきなり告白というパターンが圧倒的に多かったので、失恋が多かったのだと思います。

 でも、こういう告白は、怖い面もあります。告白した瞬間に友達でもなくなってしまうという可能性も高いですから。私も親しい友人の女性に告白したことがありますが、振られてしまって、それから一言も口をきいたことがありません。その後、また親しい友人の女性ができたのですが、そのときは、怖くて最後まで告白できませんでした。告白していれば私の人生も変わっていたでしょうか。実は、その女性は、聖子さんに少し似ていました。

 

One Voice

 大都会の生活の厳しさにくじけそうになった聖子さん。そんなとき、ふとどこからか、励ます声がします。この街で自分の好きなことをやりたいようにやればいい。すると黄昏の雑踏で、自分の靴音の響きだけが聞こえてきます。野獣のように目をぎらぎらさせて、暗くなってから周りを見回すと、自動車のヘッドライトが、幻想的な輝きを見せています。

 大都会でがんばって生きていこうソングのひとつですが、たとえば、「東京タワー」のように感傷的にならずに、迫力満点でいきがって歌っているところがいいです。このアルバムの中でも好きな曲のひとつです。聖子さんの歌いこなし方が、すばらしいです。

 もとから東京に住んでいる人は、街の雑踏の賑わいや、大量の車のヘッドライトにびっくりするというのは、信じられないかも知れませんが、地方からでて来る人間は、結構、圧迫感を感じるものです。

 聖子さんは英語の歌詞は少ないですが、歌わせてみるとわりとうまいです。「CRYSTAL」が出た後のライブで「Tea for Two」を歌ったことがありましたが、とてもうまかったです。今後ライブを開くことがあったら、洋楽カバーをガンガンやってほしいです。

 

自慢の友達

 海外に留学に行っていた聖子さんの友達が、3年ぶりに日本に帰ってきました。空港まで送りにいくと、以前よりもずっと、友達はカッコよくなっています。今晩は、二人で酒盛り。朝まで飲み明かすことにします。途中、友達の彼氏だった男性が別の女性と結婚してしまった話がでて一瞬しらけましたが、友達は涙をこらえ、すぐに笑顔を見せます。そんな友達が聖子さんは大好きで自慢のタネです。

 ちょっと、かわいらしすぎる感じの曲ですが、それは、編曲のせいではないでしょうか。でもこれが二十歳くらいの女の子たちの雰囲気。このままでいいような気もします。

 たしか、雑誌のインタビューか何かで(おそらくワッツイン)、聖子さん本人が、1stアルバムで一番気に入っている曲は何かと聞かれて、「自慢の友達」といっていました。やっぱり、この曲が聖子さんの実生活にいちばん近いのでしょうか。

 聖子さんには悪いけど、この曲はいまひとつピンときません。ああ、女の子の友達づきあいって、そんなもんなのか、かわいいね、というくらいです。きっと女性のリスナーにとっては、なにかもっと訴えるところがあるのでしょう。

 

Slopeをこえて

 まだ、恋人になったばかりの二人。これから急がずゆっくりを愛を育て、季節をひとつずつ越えてゆきます。まるで坂道をこえてゆくように。

 恋は一瞬にして燃え上がることもあるけれど、いろんな試練を乗り越えて初めて本当の強い愛になる。

 聴けば聴くほど味のある曲。みなさん、ぜひ、恋人と一緒にライブに行って、聖子さんの弾き語りを聴きましょう。(聖子さん、またお願いします)「Bright Lights」収録曲は、若さ初々しさを強調したのが多いのですが、これは、大人のシンガーが歌ってもおかしくないしっとりとした曲。

 でも、本当の人生は、この歌より厳しい。いくつかの季節を越えたくらいで、安心できない。一生死ぬまで、山あり谷あり、ずっとずっと試練は続き、愛はボロボロになりながらも耐えてゆくしかないのです。 

 

あんがい

 駅の向かい側のホームではしゃぎまわる高校生の姿を見た聖子さんは、昔はよかったと一瞬後ろ向きの気分になります。しかし、もう一度心のネジを巻きなおし、目の前の困難に立ち向かっていこうとします。

 聖子さんの恐れを知らない若々しい歌声と、明るいメロディーが魅力のこの曲。ノーテンキと知りつつも、この明るさにどれだけ励まされたことかわかりません。この曲を聴くと、なんとなく自分の未来が明るいような気がしてきます。

 私は、仕事に行き詰まったとき、「あっしたになったら、そうよ、あんがい簡単に…」とよく口ずさんでいました。すると、根拠もないのに、なぜか行き詰まりが打開できそうな気になって、気が軽くなったものです。

 しかし、もちろん、現実には、困難を打開するのは、粘り強い努力であって、決して「あんがい簡単に」いくものではありません 

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