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Marvelous Act
聖子サウンドの新しいページ
POPでファンキーなスペシャルアルバム。 

この恋がすべて

 聖子さんは、友人の彼氏を奪って、自分の恋人にしてしまいます。友人たちの冷たい態度に、最初は聖子さんは悩み苦しみました。しかし、それは悩んでも仕方のないこと。現在の彼氏との激しい恋に自分のすべてを捧げていきます。自分の運命を決めるのは、自分自身なのです。

 情熱的な物語を持つ曲。この曲以前は、聖子さんは、傷つきやすい、やんちゃな女の子という印象が強かったです。しかし、イバラの道を越えて「この恋がすべて」と言い切れる強さに、一皮むけた聖子さんを感じます。後半、何回も繰り返されるサビの部分が、これでもか、これでもかと、強い決意を何度も確認しているようです。自分の歌唱力の限界に挑戦するような、向かっていく歌い方です。

 この曲の聖子さんの強さは、何かというと、結局、一度結ばれた男女の愛の強さではないでしょうか。過去にどんないきさつがあっても、一度結ばれてしまえば、強く心が引き寄せられてしまうものです。きっと、この曲の聖子さんも、彼と結ばれる前は、行動は大胆でも悩んでばかりで、弱々しかったのではないでしょうか。

 他人の恋人を奪う物語は、昔からたくさんあります。多くの人が憧れる物語なのでしょう。また、実際に試した人も、少なくはないでしょう。でも、成功した人って何パーセントくらいいるのでしょうか。動物行動学の本を読めば、ヒントが書いてあります。人が一生の間に結ばれる異性の数は、男性の方が、女性よりも数倍、分布の幅が広がっているそうです。つまり、他人の恋人を奪える可能性は、女性の方が、男性より数倍高いということになると思います。女性の皆さんは、この歌を励みにして、どんどんアタックしていってください。男性のみなさんは、やめておいたほうが賢明でしょう。

 

もどらない二人

 彼氏を、別の女性に奪われた聖子さん。別れた当初は平気な顔をしていましたが、二ヶ月たったころ、突然、悲しみがこみ上げてきました。思いを断ち切るため、むかし彼氏と行った海岸に一人でドライブに出かけます。しかし、海岸は、そこら中彼氏との思い出だらけ。いくらアクセルをふかしても、思いを断ち切るどころか、逆に思いが募ってゆくばかりです。

 「この恋がすべて」のちょうど裏返しの関係にある曲です。「この恋がすべて」が彼氏を奪った女性の話。この曲は奪われた女性の話。アルバムでの配置が隣り合わせで面白いですね。

 この曲の魅力は、ずばり、聖子さんの歌声でしょう。できるだけファルセットに入らないように、ぎりぎりのところで、なんとかこらえようとしています。そして、なおかつ気張って歌っています。それが、この曲独特のなんともいえない感じをかもし出しています。聖子さんも95年以降になると、中音で歌う曲が多くなっていきますが、どちらかというと、しっとりと歌っており、この曲のように気張っていません。

 思いを断ち切るため、別れた彼との思い出の場所に行ったというのは、今ひとつピンときません。普通、思い出の場所に行くのは、まだ思い出にすがりたい場合じゃないでしょうか。すると、この歌で「もどらないあの日 捨てよう」というのは、単に聖子さんの強がりだったということでしょうか。

 そのほか、この曲については、いろいろ個人的な思いがあるのですが、書いてしまうと私の恋愛遍歴がばれてしまうので、やめておきます。

 

二月最後の雪の夜

 楽しかった一日のデートが終わり、聖子さんの彼氏は、帰っていきます。街角に消えてゆく彼氏の姿。空は厚い雲に覆われ、今にも雪が降ってきそうです。冷たくなってゆく指に息を吹きかけて暖めていると、彼の乗った最終電車の音がしてきます。寒い夜になりそうだけど、彼氏に会えて良かったと聖子さんは思います。今日が最後の雪の夜。暖かい春が訪れるころには、二人の愛もますます深くなっていることでしょう。

 デートが終わったあと別れるときは、とても寂しいものです。いつまでも別れたくない気持ちで一杯。明日でも、あさってでも、いつでも恋人に会えるとわかっていても、寂しい気持ちはどうしようもありません。こうした気持ちが互いにつのってくると、もうそろそろ、結婚も間近という雰囲気なのではないでしょうか。少なくとも私は、デートが終わったあと、別れていくときの気持ちが、切なくて、耐えがたくて結婚したようなものです。結婚すれば、仕事に行ってる以外の時間は、ずっと恋人と一緒にいることができると思っていました。でも、その考えは、少し甘かったです。実際は苦難の連続でした。

 この曲では、しっとりと聴かせるクリスタルボイスを、聖子さんは披露しています。思いがたっぷりこもっていて、なおかつ、どこにも力が入りすぎていないという感覚が素晴らしいと思います。女性らしさがよく出ていて、生身の聖子さんの姿が浮かび上がってきます。聖子さんは、はつらつとした歌を歌っても、しっとりした歌を歌っても、恋愛に対して貪欲な感情をもっていることが伝わってきます。それが、聖子さんの一番いいところなのではないでしょうか。

 それにしても、この歌ほど、情景がソリッドに励起される曲も、珍しいのではないのでしょうか。恋人と別れたくない気持ち、寒い冬の中のロマンチックな感じ、そして、近づいてくる春の予感。これだけあれば、もう何もあとはいらないでしょう。昔から、世の中でヒットしている曲って、歌詞が抽象的で、何かしらわかったような気にさせる曲が多いと思います。そんな中で、ひたすらリアリティのある情景の描写に徹している西脇唯さんは、偉大だと思います。西脇唯さんのアルバムは一枚しか持っていないけど、また、機会があったらもっと聴いてみたいです。

 

地上のShooting Star

 暖かな日差しの降り注ぐ春の日、街の人ごみを抜けて、聖子さんは恋人とリムジンに乗って二人きりの旅行に出かけます。紆余曲折があったけど、今では素直に愛し合える二人。美しい夜景と星空の見える丘で彼と二人きりで過ごそう、そんな想像をしながら、聖子さんの心は幸せで一杯です。

 「星の降る丘」は、具体的にどこなのでしょうか。聖子さんは以前、ずばり「ロサンゼルスのグリフィス天文台」と言ってました。私も行ったことがありますが、郊外の山の山頂に小さな天文台があり、そこから、碁盤目のようなロサンゼルスの夜景が一望できます。日本の夜景と違って、天と地にとても広がりを感じさせる夜景でした。でも、人が多く、恋人と二人きりで過ごすには、向いていないと思いました(?!)

 以前、北海道の旅行番組で、函館山の夜景を紹介する場面に、BGMとして流れているのを聞いたことがあります。でも、この歌にふさわしいのは、行ったことのない、想像するしかない遠い外国の夜景。そして、この二人は新婚旅行に行こうとしているのに違いありません。「愛してると言って」と何度もねだってみたり、「あたしの顔を忘れないでね」と言ってみたりするのは、きっと今が人生の幸せの絶頂であることを、自覚していて、この幸せをいつまでも刻み付けておこうというとする少し不安な心なのです。ハネムーンなんてそんなものです。

 この曲はメロディがとても気に入ってます。恋人と結ばれる聖子さんの幸せいっぱいの心が、素直に伝わってきます。

 

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