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SEASON
 
恋は最高に楽しくて、最高に哀しい。 

PEACH TIME

 今日は待ちに待ったのデートの日。聖子さんは、おろしたての服をきて彼氏に会いに行きます。心がウキウキして、まるで、街中が鏡のように光って見えます。彼氏には、しばらく会っていない間におこったこと、話したいことが、たくさんあります。今日は素晴らしい天気。二人は芝生のある公園に向かいます。そこは恋人たちの世界。そこもかしこも寄り添いあう恋人だらけ。彼氏は無口であまりしゃべらないけど、ただ二人寄りそっているだけで心が通じ合います。これから二人の間に、どんなにつらいことがあっても、きっと笑顔で乗り越えられる。聖子さんは、そう確信します。

 アルバム全体のプロローグになっている曲。久しぶりのデートのうれしさ、楽しさに満ち溢れています。また、これから二人を数々の困難がおそうことを予感させています。そして、その予感どおり、このアルバムでは、波乱にみちた数々のエピソードが繰り広げられていきます。

 聖子さんの歌声は、前二作のアルバムと比べると、少女の幼さが消えて、一人前の女性になった感じがします。そして、この曲以降は、聖子さんの曲は、全てラブソングになります。つまりこの曲は、「一人前の女性になったから、もうラブソングしか歌いません宣言」といえるでしょう。そういえば、聖子さんと仲がいい加藤いづみさんも、1枚目、2枚目のアルバムでは、少女の夢のような歌を中心にしていましたが、3枚目のアルバムから、突然、ラブソングを中心に歌いだしました。

 

二人のEXTRA-SHOT

 今日は彼氏と映画に出かける日。でも、彼氏は何を思ったか、いやがる聖子さんを、無理やり自動式の3分間証明写真に中に連れて行きます。ふたりでツーショットの写真を撮ろうというのです。聖子さんは、いじわるな気持ちになって、彼氏の顔をつねったりして、変な顔の写真をとります。結局、映画の時間に遅れてしまいましたが、予定にしばられないデートもまた楽しいもの。そう思うと、さっき撮れた変な顔の写真が、宝物のように思えてきて、二人でわけあって、大切に持っておこうとします。

 この歌が発表されたとき、まだ、世の中にプリクラは存在していませんでした。プリクラがブームになったとき、聖子さんファンはみんな唖然としたはず。まさか聖子さんの歌に、ベンチャービジネスのヒントが隠されていようとは。この曲を聴いたときに、それに気づいて、ちょっとオリジナルのアイデアを付け加えて、実用新案登録しておけば、いまごろ億万長者になれたのにと思うと、悔やまれてなりません。

 まあ、それだけ、作詞者の谷亜さんの観察力、着眼点が鋭かったということでしょう。歌の感想から離れますが、こないだ、電車が好きな私の息子と電車のビデオを見ていたら、谷亜さんの作詞した「俺は機関車」という童謡がながれてきてびっくりしました。谷亜さんは、すごく守備範囲が広いです。

 この曲をライブでやるときは、「Snap!」のところで、みんなこぶしを振り上げていました。なかには、飛び跳ねている人もいましたが、あれはちょっと危ないなと思いました。

 

Jasmine

 初夏の日差しが降り注ぐ交差点で、信号待ちをしていた聖子さん。その向かい側に突然現れたのは、昔の彼氏でした。聖子さんの胸に、彼を愛する強い気持ちが一気に蘇ってきます。やがて、信号が青に変わり、聖子さんに近づいてくる彼。その白々しい態度に聖子さんは反発し、彼を愛する思いを引きずりながらも、それを振り切って、次に信号が青に変わったときに、ぷいと横をむいて去っていきます。

 前半部分は、曲のテンポがよく、初夏の交差点で二人が出会った情景、聖子さんの胸を一瞬よぎった彼との思い出が、くっきりと浮かび上がります。そして、後半部分では、聖子さんのハイトーンの声の伸びは、最高潮に達し、溢れ出す切ない気持ち、揺れる思いが、めいいっぱい歌いあげられています。

 この曲の中で、もっとも描写が美しいのは、聖子さんが最後にきれいな横顔だけ残して、夏の日差しの中に消えて行く場面です。思いを断ち切ろうとする強さ、それでも断ち切れない切なさ、その二つの気持ちの間を揺れ動く、悲しいけれど甘い恋をする美しい女性の姿を、私は、大変いとおしく思います。

 さて、そもそも、「Jasmine」とは、何でしょう。歌詞の中には、初夏に咲く白い花も、かぐわしい香りも出てきません。私は、花言葉である「別離」を示しているかと思いましたが、違うようです。 聖子さんによれば、終わってしまった恋の思い出が、偶然の再会で、また香りだすようなにおいが、「Jasmine」なのだそうです。

 私たちは
失恋した相手と、一緒に仕事などをしたり、時間をすごしたりしなければならないことが、人生の中で何回かはあります。そんなときツンと横顔を向きあわせながら、ただよってくる香りが「Jasmine」なのかな。ちょっと違う気がするけれども、なんとなく実感がわいてきました。

 この曲はシングル版とアルバム版の2つがありますが、私は、アルバム版のほうが、気に入っています。最後に聖子さんと一緒にコーラスを「アーアー」と歌うのが、とても気分がいいです。(2005年6月)

 

天気雨

 聖子さんのもとにある日、一本の電話が掛かってきます。それは、聖子さんの彼氏と昔付き合っていた女性からの電話でした。聖子さんは、とまどいを感じながらも、彼女に会いに行きます。そして、彼女を彼氏と会わせるという約束をして、土砂降りの雨の中に飛び出して行きます。そのあと、友達と騒ぎながら、自分は、彼氏と別れようと決意します。彼氏も、彼女も、いまごろ戸惑っているだろうと意地悪に想像しながら。

 なぜ、聖子さんは、彼女を彼氏に会わせることにしたのでしょうか。女性独特の心理でしょうか。男性である私には理解不可能です。

 遥か昔、私がまだ十代のころ、男性の立場から似たような体験をしました。以前に親しくしていた女性にもう一度会いたいと手紙を書いたのですが、その手紙の返事をくれたのは、なんと私が過去にふった別の女性でした。つまり、彼女たちは、私に対してどういう対応をとるか、私の知らないところで相談して決めていたのです。私は、いやな気分がして二人どちらにも会わずに逃げてしまいましたが、あのとき、彼女たちがどういう気持ちだったのか、30過ぎた今でもぜんぜんわかりません。しょうがないな男なんて、とかいわれていたのでしょうか。

 アルバムの中では、まぶしい恋の歌が、3曲続いた後、ここでちょっと一休み、気分転換の曲になっています。

 

もう一度恋をしよう

 聖子さんは、恋人と別れて初めて、今までの態度を反省します。ありのままの自分を素直に出せずに、取り繕った笑顔ばかり見せていた自分。彼氏の本当の優しさに気づかなかった自分。これからはもう、自分の気持ちに素直に生活しよう。そして、いつかきっと、彼氏の方から、聖子さんのことが好きだと言わせようと決意します。

 あまり根拠のない推測ですが、このアルバムの中で聖子さん本人が、一番気に入っている曲ではないでしょうか。自分の番組のタイトルにしてみたり、ライブのときにこの曲のアコースティックバージョンのCDを配ってみたり。それに何よりも本人の作曲で、のびのびと歌っています。きっと、この曲は、聖子さんにとって、もっとも感情移入がしやすい曲のひとつではないかと思います。

 たぶん、この曲を作った当時、聖子さんには恋人がいなかったのだと思います。それよりも、歌手としての活動に夢中。有名な歌手になって、昔の彼氏を悔しがらせるんだという気持ちで歌っているのだと思います。歌詞を作った西脇唯さんに聞いてみないと、本当のところはわかりませんが。

 現在の聖子さんはどうでしょうか。もしかしたら、当時とちょうど逆の心境かもしれません。今の聖子さんには、素敵な彼氏がいて、そっちに夢中。それはそれで、ちっとも悪いことじゃないから、特に反対しません。 ただ、私たちファンとしては、何年もライブがなかったり、新曲が出なかったりすると、すごく寂しいです。聖子さん、私たちのことも忘れないでください。

 以上、推測に推測を重ねて言いたいことを言ってしまいましたが、事実と違ってたら、ごめんなさい。聖子さんは、私たちファンのことを考えて、聖子さんなりに、めいいっぱいがんばって活動しているのだと信じています。あとは、周囲に立ちはだかる壁をなんとかぶち破って、私たちの前に姿を見せてください。私たちは聖子さんをいつでも応援しています。

 

夕映えを追いぬいて

 渋滞のない夕暮れの高速道路を、彼氏を乗せて突っ走る聖子さん。危なっかしい運転ですが、聖子さんはお構いなし。最近、煮え切らない態度を取っている彼氏に喝を入れます。今夜こそ、ずっとずっとそばにいてと願いながら。

 男性をリードしてゆく頼もしい聖子さんの姿が印象的です。聖子さんは、気が強いので、こういうキャラクターは、ぴったりだと思います。でも、こういう曲は、他にほとんどありません。やはり、女性は受け身であるべきだという社会通念に、作詞者が負けてしまっているのでしょうか。

 私は、何事も、女性にリードしてもらうのが大好きです。車の運転もできるだけ妻にやってもらいます。聖子さんも、男性を引っ張って行くような歌をどんどん歌ってほしいと思っています。

 歌が終わった後の長い伴奏も、味わいがあっていいです。夕映えを追いぬいて、走り続ける車。このあと、二人の物語はどうなっていったのでしょうか。

 

水の上のプラネタリウム

 聖子さんは、仕事を終えた後、夜のプールにやってきました。プールの中にもぐって水面を見ると、ライトの明かりが水面を幻想的に照らし出して、まるでプラネタリウムのようです。無心で泳いでいると、心に浮かんでくるのは、別れた彼氏のこと、一度だけキスをしたこと、いまでも忘れられないこと、そして、ふたりでこのプールに泳ぎに来たかったこと。聖子さんは、このまま冷たい水のなかで、ずっと彼氏のことを考えていたいような気になってきます。

 プールで一人で泳ぎながら、彼氏のことを思うという、ユニークなラブソングです。はたして、こんな歌が他にあったでしょうか。でも、プールは、実は、昔の恋を思い出すのに、非常に適した空間なんです。私は、一時期、体力づくりのため、仕事が終わってから2時間くらいプールに泳ぎにいってました。最初のうちは、無心で泳いでるのですが、そのうち、いろいろなことが、頭に浮かんでくるのです。かの発明王ドクター中松氏も、アイデアはだいたいプールで泳いでいるときに思いつくそうです。

 曲の中では、その様子を幻想的に描写していて、まるで聖子さんが人魚姫(←ほめすぎ)のように聴こえてきます。リラックスした気張らないクリスタルボイスが聴ける曲です。

 プールといえば、気になるのが聖子さんの水着姿ですが、いままでにどこかに公開されたことはあったのでしょうか。まあ、聖子さんの体型は、いろんな写真をみる限り、私の妻とほとんど同じなので、だいたいの想像はつきます。その妻も、子供を産むと、ヒヨコみたいな体型になってしまいました。聖子さんも、子供できても、体型の維持には気をつけてください。

 

悲しいだけの二人じゃなくて

 駅のベンチに座り込み、真っ赤に目を泣き腫らして、聖子さんは、悲しみにどっぷりと浸ってしまいます。心に浮かぶのは、別れてしまった彼氏との楽しかった日々の思い出だけでした。

 聖子さんの曲の中でも、もっともドロドロの悲しみに沈みこんでしまう曲です。みずみずしく歌ってしまうと上滑りしてしまうこの曲、かといって大人っぽく歌いすぎてしまうといやらしくきこえてしまうこの曲を、聖子さんは、これしかないというドンピシャリの等身大のバランス感覚で、歌いきっています。やはり、聖子さん自身が作曲されたというのが、歌の良さにつながっているのではないでしょうか。

 私は、この曲を聴くと、ライブのとき最前列で見た生身の聖子さんの姿を思い出します。歌い終えた後の長い伴奏の間、ずっと黙ったままうつむいていました。やがて聖子さんは何も言わずに、そのままステージから去っていき、後には暗闇が残されました。

 

SEASON

 何度も悲しい恋を経験しながら、聖子さんは終わることのない永遠の愛をずっと探し求めていました。そして、ついにその愛にたどり着くことができました。これからどんなに季節が変わっても、星空のように深いその愛は、決して永遠に変わることがありません。

 いつか、ファンクラブの会報に、「結婚式で使いました」というファンの便りが届いていたことを思い出します。そう、聖子さんの歌多しといえども、めでたく二人が永遠に結ばれる曲は、これ一曲だけなんです。(CRYSTALには、結婚した後の状況の曲もいくつか入っています。)

 安らぎに満ち溢れたこの曲を、いま30才近くなった聖子さんから聴いてみたいと思っています。発表された当時より、きっとずっと深みを持って歌ってくれるように思われます。

 現実の世界でも、聖子さんが、この歌のように永遠の愛にめぐり合い、素敵な男性と結ばれることを願ってやみません。

 

Lucky Gray

 恋に破れ、聖子さんは、一人で砂浜にやってきました。海の方をみると、空は一面の灰色の雲に覆われています。聖子さんは、思い出に浸りながら、恋の終わりを耐えがたく感じます。やがて、聖子さんが、いちど終わってしまった恋は、もう二度と元には戻らない、と自分に言い聞かせたとき、雲の切れ間から一条の光が差し込みます。

 歌詞は、「Slopeをこえて」のように、1番と2番で内容が異なっています。1番は失恋、2番は青春の夢の挫折を歌っています。

 この曲は、アルバムの歌詞集の4〜5ページの写真をみるとイメージがわきやすいと思います。写真は、歌詞の内容とは少し合いませんが、海を見つめながらひとり物思いにふける聖子さんの後ろ姿は、とても美しいと思います。

 曲の感想からは離れますが、私は、この写真がやけに気に入っています。その理由は、この写真の聖子さんの後ろ姿が、自分のかつての恋人=今の妻にうりふたつだからです。つまらない理由ですね。

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